岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER

キリンチャレンジカップ2008 VS.チリ 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2008/01/29 00:00

キリンチャレンジカップ2008 VS.チリ<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 日本代表の仕事に約10年ぶりに復帰した岡田武史監督の下での初戦となったチリ戦を、日本は0−0で引分けた。

 「結果を出せればよかったのかもしれないが、終わってみればこういう形でよかったのかもしれない」と、岡田監督自身が試合後に話したように、勝たなかったからこそ、特段に楽観するのでも悲観するのでもなく、チームの現状を見ることができる。

 岡田監督体制になって招集されたメンバーは、オシム監督の急病を受けて急遽引き受けた経緯もあって、前体制とほぼ同じ顔ぶれでスタートし、1月15日から9日間合宿を行ってきた。旧体制との目立った違いは、この日の先発メンバーで言えば、加地亮(G大阪)に代わって右サイドバックに起用されて代表デビューを遂げた内田篤人(鹿島)か。

 だが、当たり前のことかもしれないが、試合を見ると、チームが新たに岡田ジャパンとしてのサッカーに取り組んでいることを改めて感じさせられた。特に前半は、先日の指宿合宿で試み始めたという、狭いエリアで細かいパスをつなぐ組み立てを意識してプレーしていたように見えた。

 しかし、細かいパスを繰り出すことに意識が行き過ぎたのか、ワイドに張ってプレーする相手を警戒してか、前半は特に逆サイドへ展開する大きなフィードや、前の選手を追い越す動きがあまり見られず、効果的に攻撃を組み立てられたとは言い難かった。

 さらに、選手間の距離の取り方や顔を出すタイミングがかみ合わずに、チリの良く走ってプレスをかけるプレーもあって、ミスパスも多かった。そこに、新体制下でのチームとしてはまだ日が浅いことがうかがえた。前半26分、左サイドでパスをつないでペナルティボックス付近まで攻め入ったところで、攻撃参加してきた左サイドバック駒野友一(磐田)の出したパスが、タイミングが合わずにタッチラインを割った場面など、その一例だろう。

 加えて、オフ明けゆえか、攻撃を組み立てても、ファイナルパスとなるクロスの精度が伴わずにシュートまで行けないという場面もあった。だが、これらの問題点はこれから練習を重ねていけば修正できる類のものだ。

 興味深かったのは、後半早々に羽生直剛(FC東京)と大久保嘉人(神戸)が投入されたのを合図に、全体に動きが活性化して、前半よりスペースが生かされるようになったことだ。彼らの登場で、相手の裏のスペースを取って攻めるという意識がチームとして共有され、後半の攻勢を生む契機になったように思う。

 チーム作りが始まって日も浅い段階では、そういう共有意識の有無や、チームの中での意識の反映度合いが重要になる。その意識をベースにチームの取り組みが進むのだから、この試合では、観光気分抜きで戦ってくれたチリのおかげもあって、新体制出発点でのチーム理解の度合いをよりよくはかることができたのではないか。

 岡田監督もプラスマイナス両面で確認できたことがあったようで、「次につながるようなことができたかと思う」と話した。

 ディフェンスは「計算できる」と評価する一方で、慌ててクロスを上げてカウンターを受けることや、中盤やディフェンスラインで簡単にバックパスをする、スローインなどを後ろに投げてプレッシャーを受ける点を指摘して、「勝負にこだわる部分に隙がある」と厳しく分析した。

 とはいえ、51歳の新指揮官は「今の時点で(チリのような)ああいうチームに対して、我々のビジョンの中で出来るプレーだった。まだ我々が共有しているビジョンには追いつかないかもしれないが、方向性として同じ方を見てやってくれたと思う」と言った。

 2月6日にタイとの試合で始まる2010年ワールドカップアジア地区予選へ向けて、岡田ジャパン初戦としてはまずまずというところだろう。あとはチームとしてここからどう積み上げるか。次は30日にボスニア・ヘルツェゴビナと対戦する。

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