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世界水泳目前で五輪出場が大ピンチ!
シンクロ日本代表が陥った強化の罠。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2011/07/05 10:30

世界水泳目前で五輪出場が大ピンチ!シンクロ日本代表が陥った強化の罠。<Number Web> photograph by AFLO

高難易度の楽曲に挑戦する「マーメイド・ジャパン」。メロディー性の少ない曲に変更し、打楽器のリズムに合わせて「嵐」を表現する

世界の強豪が揃う最終予選で3位以内に入れるのか?

 世界選手権で中国を下回り、アジアでの出場枠を確保できなければ、来年の五輪最終予選に出場権をかけることになる。この最終予選のハードルが、今回はとても高い。

 他の競技では、開催国の出場枠を別に設けるケースが多いが、シンクロナイズドスイミングでは設けていない。そのため、開催国のイギリスには、欧州の1枠が与えられる。欧州の大陸予選は実施されず、欧州のその他の国は、五輪最終予選に出場して、出場権を狙うことになる。

 欧州と言えば、2000年のシドニー五輪以降、3大会連続でチームの金メダルを獲得しているロシア、さらに北京五輪で銀メダルのスペインがいる。これら強豪に加え、前回の世界選手権で日本を上回ったイタリアなど侮れない国々も最終予選に参加する。出場権を得られる3位以内に入るのは、生半可なことではない。

「世代交代」を掲げた強化戦略の失敗が北京五輪前年になって露呈。

 危機に陥った理由の2つ目は、日本の強化の問題にある。

 日本代表は、日本を世界の強豪に育ててきた井村雅代氏がアテネ五輪後、「世代交代」を理由にヘッドコーチを退任した。

 その後、一貫した強化ができずにいた。北京五輪を前にヘッドコーチが辞任する一幕があり、北京五輪後にもコーチの交代が相次いだ。日本代表の強化に貢献したいと考えていた井村氏の力を借りることもなかった。時間を無駄にしたきらいがなくはない。それが、日本の地位の後退を招いたのは否めない。

 日本代表は世界選手権に向けて、これまで日本オリジナルにこだわってきた振り付けを、テクニカルルーティンに関してはロシアに依頼し、今までにない高難度の演技に取り組んでいるという。海外に依頼したのも、難度を高くしたのも現状打破のためだが、完成しなければ意味はない。習得することが可能なのか。時間は足りるのか。世界選手権そして来年の五輪最終予選まで見据えた戦略であるのか。

 チャレンジの成否は、日本のシンクロナイズドスイミングの将来にもかかわってくる。

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