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北島康介、日本新3連発。
王者が見せた余裕と欲。
~7月の世界選手権へ向けて~ 

text by

川上康介

川上康介Kosuke Kawakami

PROFILE

photograph byTakao Fujita

posted2011/03/18 06:00

3種目日本新は2008年6月のジャパンオープン以来、自身2度目

3種目日本新は2008年6月のジャパンオープン以来、自身2度目

「勝てるかなー? 冨田(尚弥)は50mに出場しないで、力温存してますからね。でも負けないように頑張ります。間違いなく、世界最高峰のレースになると思います!」

 2月26、27日に行なわれた競泳日本短水路選手権。主役はやはり北島康介だった。冒頭のコメントは、50m平泳ぎ決勝で日本新記録をたたき出した直後のインタビューでのもの。90分後に行なわれる200mの決勝に向け、ライバルの冨田を名指しして“仕掛ける”ことで、観客席を大いに盛り上げた。

 大会の数日前(2月下旬頃)、北島はこう語っていた。

「勝つとか負けるとかにこだわりはないです。今年はまず4月の日本選手権(※雑誌発売後、東北地方太平洋沖地震の影響で中止が決定)、そして7月の世界選手権というのが大きな目標。調整とは言いませんが、自分の泳ぎを完成させるということしか考えてない」

 そんな気持ちの余裕が逆に好結果に繋がったのか、今大会で北島は出場した50m、100m、200mのすべてで日本新記録を出した上で3冠を達成した。その泳ぎはパワフルというよりもダイナミック。他の選手に比べ、ゆったりとしているように見えるのだが、誰よりも前に進んでいく。上半身と下半身のバランスが良く、動きにまったくムラがない。3年目に入るアメリカでの練習の賜物といえるだろう。

「王者の風格」を感じさせた北島ならではの行動。

「王者の風格」を感じたのは、その強さだけではなかった。冨田への“仕掛け”以外にも北島は大会を盛り上げるファンサービスをいくつも行なっていたのだ。レース前の控え室にカメラが入ると、他の選手を集めてみんなでピースサインをしてみせたり、仲のいいバタフライ王者、佐野秀匡が大会MVPに選ばれると、「オレじゃないのかよ」と言わんばかりに、佐野より先に表彰台に上がろうとしてみたり。

 オリンピック競技の大会というと、どうしてもストイックな雰囲気になりがちだが、スーパースターのお茶目な行動のおかげで、この日の東京辰巳国際水泳場は、あたたかで華やかな雰囲気に包まれていた。

「昔は出る試合はすべて勝つことしか考えていなかったし、毎回世界新を出したいと思っていた。だから苦しかったし、プレッシャーもすごくありました。でも今は勝つだけではなくて、自分が泳ぐことで周りの人が楽しんでくれたり、後輩たちも一緒に頑張って、水泳界が盛り上がっていくことが嬉しい」

<次ページへ続く>

【次ページ】 「“五輪3連覇”って言葉が気になってきたんです」

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