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競泳女子に15年ぶり復帰、
39歳エバンスの信じる力。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2011/07/16 08:00

競泳女子に15年ぶり復帰、39歳エバンスの信じる力。<Number Web> photograph by AFLO

ソウル、バルセロナで4つの金メダルを獲得。ロンドン五輪を目指して新たな挑戦が始まる

 テニスの全英オープンで15年ぶりに勝利をあげたクルム伊達公子は、2008年に12年ぶりに復帰を果たした。その後の活躍には敬意を抱かずにはいられないが、アメリカからも驚くべきニュースが飛び込んできた。6月、競泳のジャネット・エバンスが15年ぶりに復帰したのである。

 現在39歳のエバンスは、競泳界のまぎれもないスーパースターである。16歳で出場した'88年のソウル五輪で自由形400、800mと400m個人メドレーの3つの金メダル。'92年のバルセロナでは自由形800mで金メダルを獲得している。何よりも彼女をスターたらしめたのは、記録だ。ソウル五輪での400mの世界記録4分3秒85は18年間、翌'89年に出した800mの世界記録8分16秒22は19年間にわたり世界記録であり続けた(800mは今なお全米記録である)。

「競泳界最古の」「不滅の」世界記録と言われてきたことからも、いかに驚異的な記録であったかが分かる。

 '96年、アトランタ五輪を最後に引退。その後結婚し、2児の母として暮らしてきた。今回、復帰を決めた経緯については、米紙のインタビューで、「特別な理由はありません。どこかで泳ぎたいと思っていて、今がその時期だと思ったからです」と説明している。

復帰表明後の大会でいきなりマスターズ(35~39歳)世界新記録。

 目標はロンドン五輪出場だが、15年という空白期間、39歳という年齢を考えれば、無謀な挑戦、現実的ではないという見方が一般的だろう。

 しかし、エバンスは言う。

「成し遂げるにはたくさんの勇気が必要だと思うし、できないと思う人もいるでしょう。でも、『できはしない』という言葉に耳を傾けないことが、乗り越えて成功する鍵なのだということを伝えたい」

 考えてみれば、エバンスが偉大な記録を出したとき、あれだけのタイムで泳ぐ選手が現れるとは誰も想像しなかったはずだ。成し遂げたのは、自分自身を信じる精神だ。今回の復帰でもその精神は変わっていない。強靭な信念が人間の可能性を再び広げることができるのか。挑戦の行方が注目される。

 ちなみに復帰表明後の6月の大会では、400m、800m自由形のマスターズ(35~39歳)世界新記録を出し、復帰戦を飾っている。

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