格闘技PRESSBACK NUMBER

Dynamite!!、決戦の構図を読む。
この大会で日本格闘技界は激変する。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/12/28 10:30

Dynamite!!、決戦の構図を読む。この大会で日本格闘技界は激変する。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 出場メンバーもマッチメークもようやくDynamite!!らしくなってきた。

『Dynamite!!~勇気のチカラ2009~』(12月31日、さいたまスーパーアリーナ)は、年に一度K-1と総合格闘技を同時に楽しむことができるビッグイベントである。それだけに、とっておきの大一番やドリームマッチがギッシリ詰め込まれているのだ。

 今大会の一番の注目はもちろん“宿敵”アンディ・サワーを迎えて行われる魔裟斗のファイナルマッチである。

無難な引退を求めなかった魔裟斗の“勇気”を観る試合。

 知っての通り、魔裟斗はK-1ワールドMAX世界一決定トーナメントを二度も制した日本人エース。過去ヘビー級も含めて魔裟斗以外にK-1の世界トーナメントを制した日本人選手はいないという事実が、彼の存在を特別なものにしている。

 K-1でデビューした当初は“夜遊びを欠かさないワル”という興行的なイメージを貼られていた時期もあったが、その裏で血が滲むような努力を積み重ねてきた男でもある。パンチだけではなく、キックも加えたコンビネーションの回転力は他の追随を許さない。

 勝負強さも見逃せない。昨年の世界一決定トーナメントの準決勝と決勝はいずれも先制のダウンを奪われてからの逆転勝利だった。1日1試合ならともかく、2試合連続して試合の流れを引っくり返せる底力を持っているK-1ファイターは、世界広しといえどもこの男しかいないだろう。

 そんな魔裟斗が考える引退試合は、従来のそれと比べると規格外というしかない。

 というのも、普通引退試合というと、当たり障りのない対戦相手を選んで無難な勝利を目指すマッチメークがセオリーとされている。そうした中、魔裟斗は引退試合の対戦相手として、あえて過去2戦2敗と分が悪いアンディ・サワーを指名したからだ。私の「なぜ?」という質問に、魔裟斗は微笑みながらサラリと答えた。

「2度負けている相手にリベンジして引退するなんてカッコよすぎるじゃないですか」

長丁場になれば石井。短期決戦なら吉田も!?

 当初はDynamite!!と同日同時間帯に開催予定だったSRC(戦極改め)のメインイベントで組まれる予定だった吉田秀彦と石井慧の一騎討ち。

 日本総合格闘技史上初となるオリンピックの柔道金メダリスト同士の対戦という看板以上に気になるのは、石井にとってこれが総合格闘技のデビュー戦になるということ。いったいどんな戦い方を見せてくれるのか? 柔道家時代も変則的な戦い方で話題を振りまいた選手だけに、その出方が注目の的だ。

 総合格闘技への転向を表明してから1年。アメリカやブラジルに渡って柔術やレスリング、ボクシングなどを学び、石井は総合格闘家としての身体作りとスキルアップに努めてきた。ジャケット(柔道衣)を着てのグラップリングの技術は申し分ないものの、総合格闘技は裸の競技。おまけに石井が今まで一度も経験したことがない打撃による攻撃もOKときている。長い目で石井の今後を考えたら、1年間の充電期間はけっして無駄とは思えない。

 スタミナとパワーは石井の方が遥かに上なのは確か。長丁場になれば、勝利の女神はおのずと石井に微笑むことになるだろう。しかし打撃戦になれば、総合格闘家としてキャリアで7年を誇る吉田に一日の長がある。試合前の主役は明らかに石井ながら、いざ試合開始のゴングがなれば、吉田を中心に試合が動いていくのではないだろうか。

【次ページ】 DREAMvs.SRC。全面対決の構図をどう読み解くか?

1 2 NEXT
アンディ・サワー
吉田秀彦
魔裟斗
石井慧

格闘技の前後の記事

ページトップ