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偉業達成の陰にあった
ウッズの勇気と計算。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2008/07/24 00:00

偉業達成の陰にあったウッズの勇気と計算。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

 タイガー・ウッズの左ひざの手術が成功した。左ひざの手術は、今回で4度目である。'94年、学生時代にできた腫瘍の除去。'02年の暮れには、ひざに溜まった水を抜いた。そして今年4月、マスターズが終わって走るように帰路につき、すぐに軟骨除去の手術をした。

 6月中旬の全米オープンは、その3度目の手術後、初の大会出場だった。それだけでなく、出場2週間前には、ほかに脛骨に疲労骨折が2カ所あった。それを押し切って出場したのである。

 全米オープンでは、バーディーを獲る以上に、いかにダブルボギーを叩かないようにするかが優勝の鉄則だ。けれどもウッズは、4日間で4つのダブルボギーを叩いて、なおかつ優勝した。僕の記憶では、おそらく初めての勝者だと思う。

 そのうち3つは、スタートの1番ホールだった。最終日のウッズのプレーを見ていて、なぜ1番ホールでドライバーを使いフルショットするのか不思議でならなかった。

 ウッズの飛距離なら第1打でドライバーを使う必要性はない。3番ウッドでも十分届く。スタートは穏やかに、というセオリーをウッズは無視した。

 その答えは、あとで解った。例えば13番ホールの614ヤード、パー5のようなコースでライバルを圧するときに、どうしてもドライバーの威力が必要だった。イーグル、バーディーを狙う戦法だ。土壇場で、初めてドライバーを使用し致命的なミスを犯すよりは、その日の1番ホールでフルショットしたらどういうミスが出るかを再確認したかったのだろう。

 練習場での渾身のショットと実戦でのそれとではテンションも違う。大胆にもウッズは、実戦でミスを容認し、いざという土壇場でミスが読める、あるいは軽減させる戦法をとった。

 かつてサンディ・ライルが世界マッチプレーでの決勝戦の土壇場で、大会中初めてドライバーを使い致命的なミスショットをして敗れたことがあったが、ウッズは、その逆だった。ミスを怖がらない勇気と緻密な計算がトリプル・グランドスラムを生んだ。

 全米オープン優勝の代償として、ウッズは今季を棒に振った。ただ、そこにも勇気と計算があったはずだ。もう一度、ウッズのフルショットを見たいものだ。

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