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全英オープンに見た
最終日首位の難しさ。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2008/08/27 00:00

全英オープンに見た最終日首位の難しさ。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

 球聖・ボビー・ジョーンズは、大きな大会を迎える1週間前から、食事が喉を通らないことがしばしばあったと自伝で告白していた。心の準備を整えようとすると、そこから極度の緊張感に襲われるのだろう。

 ゴルフトーナメントは、4日間で72ホールを戦い抜いて、順位が決まる。つまり3度の夜を迎えなければいけないのだ。その間に、思考するという時間があまりにも長いことが、戦う選手の心や体調を揺さぶる。

 7月から8月初旬にかけて、男子と女子の全英オープンが開催された。男子の大会では、久しぶりにグレッグ・ノーマンが優勝争いをした。53歳。かつて世界最強の男と呼ばれた選手だ。

 「僕は、翌週の全英シニア・オープンに向けて準備をして、優勝を狙って来たのに、まさか全英オープンでこんな(優勝争い)になるとは(笑)。びっくりしているのは僕自身だよ」

 3日目を終えて首位。ここまでのノーマンのゲーム運びは、素晴らしかった。淡々と、無理せず、コースや自然に歯向うことなく、我欲をむき出すというよりは、あるがままのゴルフという感じだった。その彼が、最終日になると、3日間で見せたゴルフとは別のゲームをしていた。闘争心がむき出しになり、いまの自分の年齢や体力、技量との融和ができなかった。首位と6打差の3位に終わった。

 2週間後、今度は全英女子オープンで、日本の不動裕理がやはり3日目を終えて単独首位だった。'77年樋口久子の全米女子プロ優勝以来、日本人選手2人目のメジャー優勝か、という展開になった。しかし、2位の申智愛に逆転され、4打差の3位に終わった。

 ゴルフは、考える時間がとてつもなく長く、(スイングしてボールを打つという)プレー時間が極めて少ない。18ホール、平均4時間のゲームで、プレー時間は、2分〜3分である。

 「アドレスして、一瞬、ちょっとでも迷ったら、ミスショットになりますね」と宮里藍が言ったことがある。

 最終日の18ホールで優勝争いをするということは、技術だけでなく、心模様が、勝敗を左右する。時間があればこそ、百戦錬磨のノーマンにさえ差し込む“迷い”。だから、ゴルフは難しい。

■関連コラム► 期待するからあえて言う。宮里藍よ、ワルになれ! (2004年12月28日)

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