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チームのため、師匠のため。川上憲伸、真のエースへ。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byHideki Sugiyama

posted2006/06/22 00:00

チームのため、師匠のため。川上憲伸、真のエースへ。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 本当のエースと呼ばれる条件。それは、チームが苦しい時に勝てることだ。その意味で、今シーズン、誰もが真のエースになったと認めるのが、中日の川上憲伸である。

 川上が入ったばかりのころ、エース教育を施したのは当時の投手コーチ、山田久志だった。山田は「中継ぎエースとか抑えのエースとかいうが、エースはチームに一人だけ。お前に任せた」と言い、川上が門限破りをしても「お前がエースになるため」と黙認したこともあった。

 あれから8年。象徴的だったのは6月6日のピッチングだ。対中日8連勝中と苦手のロッテを相手に、川上は快投を見せる。7回途中までは完全、あと3人までノーヒットノーランの1安打完封勝利。まさに「苦しい試合に勝つ」というエースの条件を十二分に満たしたのである。

 ロッテに勝つのは昨年5月20日以来。このときもあと4人のところまで無安打に抑えた川上は、「去年はあと4人、今年はあと3人。来年はあと2人の1安打ピッチングをしようかな」と余裕の表情で語った。

 昨年までは、気持ちばかり焦って投球の「間」がとれていなかった。シーズン中盤、阪神とのデッドヒートを繰り広げたが、8月以降1勝5敗と、大事なところで結果を残せない。この悔しさから、昨年オフのトレーニングは今まで以上に真剣に取り組んだ。

 今年は交流戦に入って以降、勝ち星、勝率、防御率、奪三振と、投手の主要部門でトップを争っている。あまり人を褒めない落合博満監督も、「心技体があれだけ充実していれば、そんなに崩れる投手ではない」と認める。また、ある中日関係者は、「いま、監督に妙に余裕があるのは、全幅の信頼をおけるエースがいるから」と語っていた。本人にも自覚が出てきたのだろう。「僕が投げるときは、中継ぎ、抑えを休ませたい」と、目指すは常に完投だ。

 師匠の山田が、今年、野球殿堂入りを果たした。その知らせに、真っ先にお祝いの手紙を送ったのは川上だった。そこにはこう綴られてあったという。

 「あなたのような偉大な投手の下でエース教育を受けたのを忘れません。オフには優勝報告とともにお祝いをさせてください」

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