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デラホーヤ引退で考える
ボクサーの身の引き方。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2009/05/14 06:00

 去就が注目されていたオスカー“ゴールデンボーイ”デラホーヤが、正式に引退した。

 パッキアオに惨敗してから4カ月、36歳のスーパースターは、「最高のレベルで戦えなくなったのに現役でいるのは、自分自身に対しても、ファンに対してもフェアではない」と語り、そのスマートな身の引き方が好感を持たれている。

 だが、ここに至るまで本人は悩みに悩んで、会見の直前にやっと決断したという。ボクサーが引退に踏み切るには、かくも決心がいるものなのだ。

スーパースターにして大成功した興行主。

 バルセロナ五輪金メダリストからプロに転じて約16年。その大半を世界の頂点で過ごし、前人未到の6階級制覇など、世界王座に就くこと10回。トリニダードはじめ、強敵のほとんどと対戦した点も評価されるべきだろう。

 8年前には自らの異名を用いた興行会社、ゴールデンボーイ・プロモーションを設立。元銀行家をパートナーに迎え、資力と名声にものを言わせて、ドン・キングやボブ・アラムらも羨む急成長を遂げた。こうした「選手兼プロモーター」は過去に例がない。敗れはしたが、当時無敵のミドル級王者バーナード・ホプキンスに果敢に挑むなど、体重の壁を超えてビッグマッチを実現させ、プロモーターとしての手腕も示した。

 最近7試合では4度負けを喫し、誰の目にも衰えは明らかだった。それでもこの敗北のなかにメイウェザー戦、パッキアオ戦というPPV史上に輝く興行記録を残した2試合が含まれているのだから、デラホーヤ人気はすさまじかった。

アリも、日本のあの元王者も……引き際が難しい理由。

 引き際は潔く――はどの世界でも同じだが、とりわけボクサーの引退が問題となるのは、時機を逸するとその後の人生を狂わせることにもなるからだ。あのモハメド・アリにも、「(惨敗した)最後の2試合さえやらなければ、今も元気でいられたのに」と同情する声がある。

 その点デラホーヤは、「会社のことを最優先したい」という事業家としての思いが引退の後押しをした。選手としては“ハッピーエンド”と言えるだろうが、次の道が決まっていたからこそ、まだ決断しやすかったのかもしれない。日本で進退問題が取り沙汰されているあの元王者も、「やりがいの持てる引退後の仕事」と早く出会ってほしいものだが……。

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