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アメリカの英雄となった
パッキャオの次なる目標。
~フィリピン人ボクサーの王~ 

text by

林壮一

林壮一Soichi Hayashi Sr.

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2009/06/02 06:00

 5月2日、ラスベガス・MGMグランドガーデンアリーナにつめかけた1万6262人のファンは、マニー・パッキャオのあまりの強さに驚嘆した。

 昨年末、オスカー・デラホーヤに引導を渡したファイトに続き、英国の人気選手、リッキー・ハットンを赤子の手を捻るかのように3度キャンバスに這わせ、2ラウンドで病院送りにしたのだ。リング上で大の字になったハットンは、5分近く身動きが取れなかった。

 現在のボクシング界は、このフィリピン人を中心に動いている。デラホーヤ戦では1100万ドル、ハットン戦では1200万ドルのファイトマネーが最低保証されたが、もはや「時代の寵児」という言葉さえ陳腐に響く。'01年にパッキャオがアメリカに進出した際、一体誰が今日の姿を予想しただろうか?

“ホンモノの強敵”を拳ひとつで撃破してきた真の王者。

 アメリカにおけるデビュー戦でIBFスーパーバンタム級タイトルを獲得したものの、当初、パッキャオは前座選手にすぎなかった。彼はビッグネームとの対戦に意欲を燃やし続ける。マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスというメキシコ3大王者と、計7試合をこなして5勝1敗1引き分け。オープニングベルから試合終了まで徹底してKOを狙うスピリッツと、高い技術が本場ファンのハートを掴んでいった。

 パッキャオ以前にボクシング界の主役に君臨していたデラホーヤが、政治力に守られながら分のある相手との試合を重ねて6階級を制したのとは違い、その時点で最も危険な敵を選び、ことごとく粉砕してきた。

政界進出を表明。野望の大きさもデラホーヤを凌駕する!?

 有色人種初の大統領が誕生したとはいえ、アメリカ合衆国には依然として人種間の壁が高くそびえる。今回のパッキャオ対ハットン戦も、リングサイドで撮影を許可されたフィリピン人カメラマンは一人もいない。そんななか、パッキャオは己の拳で最も客を呼べる世界チャンピオンとなり、“パウンド・フォー・パウンド・キング”として、その一挙手一投足を凝視される存在となったのだ。

 早くも何名かの王者が対戦を熱望し、次戦の相手に名乗りを上げている。'11年以降には母国で政界へ進出する意志も表明した。パッキャオのサクセスストーリーはまだまだ続きそうだ。

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