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快調・原采配の真髄は、「三つのバント」にあり。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2006/05/08 00:00

 開幕17試合で13勝3敗1分(4月19日現在)。いま、巨人の原辰徳監督は、何をやっても当たる。

 負傷した高橋尚成の代役、内海哲也が投げれば好投。右翼、亀井義行の代わりに矢野謙次を起用すれば大活躍。4月15日の横浜戦では、巨人キラーの土肥義弘に対して右打者をズラリと並べると初回に3点をあげて攻略。さらに皐月賞の1着、メイショウサムソンまで当てるおまけつきだ(「名将」と李承ヨプの古巣「サムソン」をかけて予想したらしい)。

 なぜここまでうまくいくのだろうか。3年ぶりに巨人に復帰した原監督は、就任早々の秋季キャンプで「巨人の戦力は弱い。そのためには『我』を捨て、『個の結集』をしなければいけない」と説いた。その上で、勝利のためには自己を捨てる「ジャイアンツ愛」を実行に移した。

 巨人にとっては、球界の盟主という伝統が、ときに重荷になることもある。そこで原監督は「巨人のユニフォームを着ている者に、生え抜きもよそ者もない。すべて巨人の旗の下に一つでなければいけない」と考えた。だから、伝統ある主将に、初めて移籍組の小久保裕紀を任命し、70代目の4番には、韓国の主砲、李承ヨプを据えたのである。

 そして迎えた今シーズン。ある球団関係者は「開幕からの快進撃は、三つのバントにあった」と、原采配の妙を語る。

 一つめは、横浜との開幕戦の初回。1番清水が出塁の後、“よそ者”小坂が強攻策でセンター前に痛打。ここで原監督は、生え抜きの二岡に送りバントを指令。結果、李、高橋由がヒットで続き大量4点につながった。小坂はこのとき「自分は信用されている」と身震いし、二岡は「勝利のための自己犠牲」を痛感することとなった。

 二つめは4月4日のヤクルト戦。1点リードした6回、なおも無死一、二塁で、ここまで打率5割を超えていた阿部にバントを命じた。その後、亀井の代打、矢野の起用がズバリ成功。2点タイムリーで期待に応えた。

 そして三つめは4月9日、李承ヨプのバントである。4−3と1点リードした7回無死一、二塁。結局は2ストライクに追い込まれヒッティングに変更したものの、ここでナインは、4番打者とてチームのためにバントも辞さないという指揮官の強い姿勢を感じることとなったのである。

 全員で戦うことの小気味よさ。それはここ数年、巨人の選手が忘れていたものだった。4月7日、上原が中日・立浪にサヨナラ満塁本塁打を浴びたとき、ナインが自然発生的にマウンドに集まり、上原を慰める姿が見られたのも、全員野球を目指してきたことの表れである。

 また今季は、ベテランの投手陣をうまく起用していることも、チームの一体感を作る要因となっている。

 開幕からの先発ローテーションは、表(最初の3戦)が上原・高橋尚・グローバー、裏(次の3戦)がパウエル・工藤・桑田と、いずれも実績のある投手を配した。今季から加わった尾花投手コーチの発想である。巨人には尾花コーチをして「ソフトバンク以上」と言わしめる若手がいるのに、あえてベテランを重用するのはなぜか。それは、工藤、桑田にしてみれば、いつでも野間口、西村が控えていると思えば必死さが違うし、先にベテランを外すと残るのは不満だけ、という理由からだ。

 生え抜きとよそ者、そして、ベテランと若手。競争のなかから良い緊張感が生まれ、それがいまの巨人の強さにつながっているのである。

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