NumberPREMIERの動画インタビューによる新連載「ドラフト ノンフィクション」では、一人の球児が野球と出会い、"運命の日"を迎えるまでの栄光と挫折の日々を、選手と関係者の証言をもとに描き出す。記念すべき第1回に登場するのは、楽天から4位指名を受けた大栄利哉(学法石川)。中編では、甲子園までのリハビリや、佐々木順一朗監督から見た成長などについて語られている。《前編、後編も併せてお楽しみください》
下級生ながら、学法石川の要だった。
キャッチャーとして守備を引き締め、ピッチャーとしてもマウンドを支配する。攻撃面では4番バッターを担い、柔軟なバッティングで打線を牽引した
2024年、33年ぶりとなるセンバツ出場の原動力となった大栄利哉に悲劇が訪れたのは、大会を間近に控えた2月下旬だった。
自転車事故によって左足靭帯の損傷および一部断裂、そして腓骨を骨折する大怪我を負ってしまったのだ。
「誰がいいとかそういうことではないんですけど、よりによって……とは思いました」
監督の佐々木順一朗が嘆く。6歳上の兄・陽斗にとっても、プロを目指す弟の大怪我は他人事とは思えなかった。

ちょうど1年前、中央大で4年生になった陽斗は「ドラフト候補」として名を連ね、自身もプロ入りに手ごたえを掴んでいた。ところが、重要なアピールの場である春のリーグ戦で右肩を痛めたことで思い描くピッチングができなくなり、プロ志望届の提出を断念。トヨタ自動車でプレーする道を選んでいた。
「お父さんとお母さんから(弟の事故を)教えてもらったときに、僕も結構、落ち込んだというか。『利哉も同じ舞台(甲子園)に立てる』とワクワクしていたんで」
チームも家族も暗くなる。そんな状況でも、誰よりも明るかったのが大栄本人だった。
「落ち込んでいる姿を見せてしまうと、チームに与える影響が大きいと思ったんで」

少なくとも数週間の安静が必要ななか、大栄は「甲子園が終わったらゆっくり治そう」と、治療を最小限に抑えた。事故から1週間後には軽めのランニングから開始し、なんとか動けるまでの状態を作っていったという。
甲子園でスタメン出場できるほど、左足は回復しなかった。それでも健大高崎との初戦、4点を追う9回、1アウト一、二塁のチャンスで代打として打席に立った。結果としてはサードへのファウルフライに倒れ、チームも敗れたが、大栄は晴れやかな表情で語る。
「自分に繋いでくれて、先輩方に感謝しました。本当に感動したというか、いいチーム、いい仲間に恵まれているなと」
たった1打席の甲子園。だが、成長するには十分すぎる濃密な歩みだった。24年の夏の大会が終わり「大栄しかいない」と、キャプテンに任命されたのも必然だ。
「人間的には一気に次の段階に行ったような気がしますね」
監督の佐々木はそう語り、目を細めていた。

動画では以下のような話題について語っています。
- センバツ前に大怪我を負って
- 足を引きずりながらの甲子園
- “高校No.1投手”との対戦
- 怪我で狂った身体のバランス
- 弟を支える兄・陽斗の想い
- 佐々木監督が語る大栄利哉の成長
念願の甲子園を前に襲った悲劇。チームや兄が落胆するなか、大怪我を負った大栄選手は大会出場に向け明るさを貫いた。約25分間の動画インタビューを是非ご覧ください。
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