紅茶の入ったティーカップをフォークボールの挟み方で持ち上げた村田兆治は、著者に向かって言った。「力を入れて取ってみろ」。言われた通りにするが、ティーカップはピクリともしない。
「村田さんの著書を編集していたときでした。他のマスコミ人にも必ずやってみせるそうなんですが、『僕は口下手だから言葉では伝えられない』と言って、そういうことをやるんですよ。そこに何とも言えない哀愁があるんです」
無口で不器用。しかし不思議と人間を惹きつける魅力を持つ男。村田には今の日本人の多くが失ってしまった空気が満ちている。
本書は、技術はもとより個性も一流だった懐かしい「サムライ」たちの物語だ。
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photograph by Tamon Matsuzono