チームとしてよく組織され、ある程度はボールがポゼッションでき、強豪相手にも食い下がるのだが、最後の大事な場面で詰め切れず、防ぎ切れずに結局は僅差で負ける。「健闘」と評されながらも、一方で「個」の勝負強さ、ペナルティエリア内での強さの必要性が語られる――。アテネで早々とグループリーグで敗退した五輪代表に対する評論は、そっくりそのまま、'98年フランスW杯に出場し3戦全敗した日本代表が日本サッカー界に投げかけた課題でもある。
アテネ五輪代表の選手たちは、6年前「世界に追いつくために」として提示されたこの課題に対し、どれだけモチベートされていたのだろうか。彼らの目は常に、ここ一番の勝負の時に打ち破るべき相手を見据えていたのではなく、チームメイトや監督の顔を見ていたのではないか。その心理的エネルギーは、組織のよき一員として自分がユーティリティーであることを示すことに注がれてはいなかったか。緻密(ちみつ)に練られた戦略に正しく収まっている自分に満足してはいなかったか。
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