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「阪神みたいな試合がしたいです」木下グループ杯‟銀メダル”友野一希が野球に例えて分析した『自分に足りないもの』とは?「決めるところをしっかり決めて...」《野口美恵コラム》
数々のスケーターを長年取材し、選手からの信頼も厚いライター野口美恵さんが現地取材をもとに綴るオリジナルコラムをお届けします。
今季の国際大会の幕開けとなる「チャレンジャーシリーズ木下グループ杯」(9月5-7日、大阪)で、友野一希(27)は、日本男子ではトップとなる銀メダルを獲得。上々の五輪レースをスタートさせたと思われたが、その目に安堵の色はなかった。3度目となるオリンピックシーズンを迎えた27歳の目には、どんな景色が見えているのだろうか。
表彰式からわずか10分後、銀メダルを手にインタビューに現れた友野の表情は硬く、質問を受けても視線を泳がせながら、口を開いた。
「内容的には今大会は、ショートとフリーで合計2本以上、きれいな4回転を決めたいなと思っていました。単発で2本は決めることができたし、4回転に関しては良かったんですが……」
そして反省点を挙げ始めると、言葉が止まらなくなった。
「フリーは、3回転ループも、トリプルアクセルも3回転フリップも、絶対に点数を取るべきところが全体的に取れていませんでした。スピンもちょっと感覚が良くないなと思っていたらレベルが取れていませんでしたし。フリーに関しては4回転中心の練習をしていたので、演技後半の詰めの甘さが出たと思います。練習で変なミスがあったところが、そのままちゃんと出てしまった感じです」
ビジネスマンのPDCAサイクルのような「セルフマネジメント力」
友野の強みは、状況判断力である。今大会では何を目標にすべきか、そして何を課題として見つけ、次の試合にどう繋げるか。まるでビジネスマンのPDCAサイクルのように、セルフマネジメントを行う。この大会は「五輪代表への計画の一部」という感覚だったからこそ、順位を喜ぶよりも、淡々と演技についての分析を続けていたのだ。

実際のところ、シーズンイン前には、これまでの経験を結集させたシーズン計画を考えていた。8月のインタビュー時にはこう語っていた。
「オリンピックシーズンということもあり、どの試合も選考にかかってくると思うので、ピーキングは少し早めを意識しています。今季のオフは、練習での4回転のフォームがしっかり固まっていて、今までのシーズンに比べて、課題が見えている上で練習ができている。あとは試合の曲の中での完成度を高めていきたい。早い段階でその切り替えが出来ています」
例年よりも早く4回転ジャンプのフォームを固めた友野は、大会スケジュールも念入りに計画した。8月に国内大会で本番の緊張感を確認。試合感覚を掴んでから、9月には国際大会である「木下グループ杯」と「ネーベルホルン杯」に出て、国際評価を確かめると同時に、世界ランキングのポイントを獲得しておく。満を持して10月と11月のGPシリーズで最初のピークを持ってきて、五輪選考へと繋げる――。そういった意味で「木下グループ杯」は、国際大会の初戦として重要な一戦だった。
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