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「結婚してから“嫁っぽいこと”を何ひとつ…」プロゴルファー上田桃子が語る“引き際”と「最後まで、うまくなれなかった」の深層【ロングインタビュー】

2025/02/21
昨季で競技活動を休止した上田
次々に若手が台頭する女子ゴルフ界において鋭いまなざしで存在感を示し続けた。なぜ今、ツアーを離れる決断をしたのか。求道的な姿勢で追い続けたゴルフの理想、今後の人生の展望などを本人が語った。(原題:[プロ20年目のピリオド]上田桃子「“楽しい”とか“笑う”より大切だったもの」)

 第二の人生の始まりに、上田桃子は料理教室通いを10年ぶりに再開させた。

 クラブを包丁に持ち替え、和洋中のメニューの習得から、栄養学や食材の目利き講座まで行われる学びの場。12月のある日の食卓には、エビチリに鶏の唐揚げ、わかめスープが並んだ。

 隣にはかつての戦友がいた。小学生時代に出会い、10代で同じコーチに師事した諸見里しのぶ。かつては激しく対抗心を燃やしたライバルから遅れること5年、昨シーズン限りで上田が第一線を退いたことで、2人はオフの穏やかな時間を共有した。

「私は一度に二つのことを済ませたいタイプなので、学びに行って、しのぶにも会えて、一石二鳥。せっかちなので、何かしていないと楽をしているみたいで落ち着かないんです」

 キャリアをひと段落させたばかりだというのに、寸暇を惜しんで次の可能性を広げようとする姿勢はコースにいる時と変わっていない。

 38歳になった上田が、20年のプロ生活に区切りをつけると決めたのは、昨年9月に行われた国内メジャーの日本女子オープンだった。メジャーとは年4回のビッグトーナメントで、ツアー通算17勝の上田もこのタイトルだけは縁がなかった。「この数年はメジャーで勝ったらやめるというマインドでいた」と悲願を込めた大会で、決断を促されるような一打があった。

Getty Images
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 初日の12番だった。179ヤードと距離の長いパー3でティショットがグリーンサイドに流れた。

「5番アイアンで球が右にすっ飛んでいったんです。その球が出るときは、自分の調子は良くない。次のホールですぐに修正できれば『まだ戦える』と思えるけれど、あの時は修正が利かなかった」

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photograph by Kenta Yoshizawa

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