小さな手にくるんだ甘いパンを記者室で静かに口に運ぶ。そんな姿を覚えている。気がつくと、つい、その人の柔かな顔を追ってしまう。
賀川浩さんはサッカー報道のまさに生きる伝説であった。
16歳の釜本邦茂の「ボールのバウンドに、ヒザを上げて受けたときの感じ」(賀川サッカーライブラリー)に将来を予感した。海外修業志望の名も無き岡田武史少年にはまず高校へと諭した。無数の試合を見ずに見つめた。師走5日、99歳で世を去った。
勝手に「師」と思っている。インタビューを何度か。たまに現場で挨拶を交わす。近しくはないのに「思考の芯」を授けられた。
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photograph by Tadashi Shirasawa