信じる心がミラクルを呼び込んだ。体操ニッポンが大逆転で2大会ぶりの頂点に立った。
パリ五輪の体操競技男子団体総合決勝の争いは5種目を終えて中国が1位、日本は3.267点差で2位。残り1種目のみでの3点差は、逆転の可能性を見出すにはあまりに厳しい数字だった。しかし、日の丸を背負った5人は「あきらめない」という気持ちで一致団結していた。
最初に演技したのは杉野正尭。2017年に18歳でナショナルチーム入りした逸材だが、代表選考会では何度も上位陣に跳ね返され、東京五輪は補欠の座に甘んじていた。五輪と世界選手権を通じて初めて立っている大舞台がこのパリ五輪。だからこそ、杉野は鉄棒の演技にすべてを懸けようとしていた。最初の手放し技はF難度のペガン。背中向きから半分ひねってバーを握る大技で会場を沸かせると、コバチからコールマンの連続技も成功。着地までまとめ、14.566点を出した。
中国の1番手は肖若騰。'17年世界選手権の個人総合金メダリストで東京五輪では個人総合銀メダルを手にしている実力者だが、着地で大きく動いて13点台と取りこぼした。だが、日本との差はまだ開いている。
日本の2番手は杉野と同様にパリ五輪が初の大舞台である岡慎之助。美しい体操の次世代継承者は、パリ五輪の代表に決まった5月以降に急激に力を伸ばし、演技をするたびに成長を見せながら団体決勝を迎えていた。「耐えるのは得意」とはにかむ20歳はコールマンなどの離れ技を完璧な位置でキャッチして14.433点。日本は重圧がかかる中でフレッシュな2人が隙のない演技を連発した。すると、中国の2番手として登場した蘇煒徳にプレッシャーがのしかかった。蘇は伸身トカチェフとコールマンで2度にわたって落下するという考えられないような大失敗で11.600点となり、この時点で日本は一気に形勢を逆転した。
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