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「神が授けたかのような…」恩師・都築章一郎が語る羽生結弦のメンタリティ「結弦はすさまじいまでの闘争心の持ち主」<アーカイブ記事/2019年>

世界選手権フリーでは圧巻の演技で底力を見せつけた。少年期に羽生の指導に当たった都築章一郎氏が、その強さの原点と、来季に向けた課題を語った。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2018-2019[恩師が見た世界選手権]神が授けた精神力。)

 世界選手権の羽生結弦は、全身全霊を込めた姿を見せてくれた。大会が終わった今、そう感じています。

 ショートプログラムから振り返りましょう。

 実は(2回転になった)最初の4回転サルコウは危惧していました。6分間練習の最後の方に跳んで失敗し、練習の終了間際にももう1本跳んで今度は成功させました。ただ、本来はもっと早いタイミングで跳んで、心を安心させておくべきです。ましてや滑走順は1番でしたから演技直前に試したことになります。「どうなのかな」と心配していましたが、悪い予感が当たってしまったと思います。

 結果、3位で終えることになりましたが、翌々日のフリーは一転、素晴らしかった。どこがよかった、ここがどうとかもはや言う必要のない、「出し切った」という演技でした。崇高なる心を感じました。

 あの演技ができたのは、やはりショートのつまずきがあり、どうにか挽回しようという思いがあったからでしょう。

 そればかりではありません。結弦がすさまじいまでの闘争心の持ち主であることが大きいと思います。

チェンはフリーで4回転を3種類4本跳び優勝。羽生は合計22.45点差で2位に。「完全に実力不足」と来季の飛躍を誓った ©Asami Enomoto
チェンはフリーで4回転を3種類4本跳び優勝。羽生は合計22.45点差で2位に。「完全に実力不足」と来季の飛躍を誓った ©Asami Enomoto

小さい頃からとんでもなく負けず嫌いだった。

 小さな頃から彼はとんでもないくらいの負けず嫌いでした。そして負けたときに感じるみじめさも心に染み付いていますから、常に「絶対に負けたくない」という思いで練習もしますし、負けを取り戻そうとする。その負けず嫌いぶりは、他の子どもたちと比べものにならないものがありましたね。

 フリーのあの滑りは、そうしたメンタルを備える結弦ならではの演技でした。小さな頃から成人になるまでずっと変わらない、飛びぬけた負けず嫌いの心を持ち続けていること、スタンスがまったくぶれずに今日まで進んできたことも、あらためて感じる機会になりました。

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photograph by Chikara Takasu

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