シルバーコレクター。ここ2年、そんな風に海外メディアから呼ばれるようになっても、気にしたことはなかった。金も銀も彼にとっては大きな違いはなかった。子供の頃からモットーは「練習してきたことを出す。結果はその上でついてくる」。
しかし21歳になったこの冬、転機はおとずれた。2月の四大陸選手権で初優勝すると、「世界選手権は結果を求める」と初めて宣言。ところがミスが重なり、まさかの4位で表彰台さえ逃した。
「僕が思っていた以上に、自分が弱いことを痛感しました。この悔しさを1日でも長く心に刻んで、少しでも成長して、またトップ争いに戻って来られるよう頑張ります」
一度に覚醒と失墜を経験した宇野は、来季に向けて新たな境地に立った。
自分が優勝することで、周りの人が喜んでくれるんだ。
宇野の「結果を求めない」というモットーは、山田満知子コーチの教えが根底にある。
「子供の頃から勝ち負けより、練習の成果を出すことが大事と言われてきました。ミスをして勝っても褒められない。でも力を発揮すれば、何位だったとしても褒められるんです」
だからこそ、世界トップを狙うレベルにまで力を伸ばしてきても、宇野は勝利を狙わなかった。試合でも「いつもの練習通り」を意識することで、無駄な緊張は生まれない。一方で、あと一歩の意地が足りず、勝てる試合でさえ銀メダルに終わっていた。
宇野は、銀メダルであることは後悔していなかったが、その内容には反省していた。
「(昨季の)GPファイナルも世界選手権も、連続ジャンプで弱気になっていました。4回転を降りたあとの連続ジャンプは『転んだらもったいない』と思って、3回転ではなく2回転をつけてしまう。それは自分を信じられていないから」
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています