藤井聡太が、永瀬拓矢王座を破って新王座に就き、前人未到の八冠(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)となったのは十月十一日のこと。
王座戦の主催者、日本経済新聞よりエッセイの依頼を受けており、盤側でそのときを目撃した。私はヘボ将棋のまま馬齢を重ねたが、歴史的な日に立ち合えたのは、長年のファン歴に免じて、どなたかが思わぬプレゼントをしてくれたのであろう。
対局場は京都市内のホテルの一室。盤を挟んで対局者が一心に読みふけっている。凜とした気配が伝わってきて、清々しい。
藤井は、優し気な二十一歳の若者だ。永瀬優位で終盤に入ったが、失着があり、藤井の逆転勝ちとなった。勝者は「最後は負けにしたと思いましたが……とても勉強になりました」と口にし、敗者は「終盤、決定力がなかったと……でも悲観せずに課題に取り組んでいきたい」と口にした。
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