前回大会ベスト16で敗れたなでしこジャパンは、12年ぶりに世界の頂点に返り咲けるのか。悲願の代表選出に大粒の涙を流した背番号8が、その喜びと今大会に懸ける思いを語った。
吉報を知ったのは家族からの連絡だった。6月13日に行われた女子ワールドカップ(W杯)の日本代表発表。池田太監督が選手名を読み上げる様子はオンラインでも同時配信されたが、猶本光は見ていなかった。いや、見ることができなかった。
「PKを見ていられない、みたいな感じでした」
ここまで歩んできた道のりを思えば、不安がちらついたのは無理もない。LINEに届いた代表入りを知らせるメッセージを見るやいなや、猶本の頬にうれし涙がこぼれ落ちた。しばらく止まらなかった。三菱重工浦和レッズレディースのチームメートから祝福を受けると、また泣けた。
そして、この日のハイライトは浦和での会見。スーツ姿の猶本は、「20歳の時、なでしこジャパンに初めて選出され、約9年間は一度も世界の大きな舞台、大会とは縁がありませんでしたが……」と話すと、その先は言葉にならなかった。
「涙は涸らしてきたんですけど……」
会見までの滂沱でおしまいだと思っていたのに、胸の奥には自分でも気づかないほどの水量をたたえた深い泉があったのだ。
「メンバー入りはゴールではないと思っていましたが、会見では今までのことが頭によぎり、込み上げてくるものがありました。なでしこジャパンの一員として出る初めての大きな大会。長くかかっちゃったな、と」
猶本はしみじみと言った。20歳だった'14年5月に、女子アジア杯のメンバーとして初めてなでしこジャパンに選出されてから、実に9年がたっていた。
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photograph by Yuki Suenaga