武豊騎手が渇望していた、日本のチャンピオンホースで挑んだ凱旋門賞。ダービー馬ドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)という最強のパートナーを得て、過去100回の歴史で欧州以外の調教馬には一度たりとも凱歌を上げさせなかった堅い扉をこじ開けようとした気概に不足するものはなかったが、今年もその堅塁を抜くことはかなわなかった。目に見えないなにかに押さえつけられたようなスタートの遅さ、促しても促しても進んでくれない道中の鈍い行きっぷり。20頭立ての19着という厳しすぎる現実は、落胆以外の表現が見当たらなかった。敗因は重たすぎる馬場なのか、それ以外になにかがあったのか――。
凱旋門賞当日のパリロンシャン競馬場の馬場状態は、10段階中、上から7番目のTRES SOUPLE(とても柔らかい)だった。ご承知のようにJRAの基準は良、稍重、重、不良の4段階で、それに合わせると「重」ということになる。
その日の第1レースが始まる寸前に決して弱くない雨が降り始め、第4レースに組まれていた凱旋門賞のパドック周回を待っていたかのように、さらに強烈な雨が襲った。馬場はもう一段階悪化していた可能性が高いが、だとしてもオルフェーヴルがソレミアに寝首をかかれてクビ差2着に惜敗した'12年の馬場状態、COLLANT(粘着)と同等。「今年の凱旋門賞が特別に重い馬場だったということはありません」と、武豊騎手だ。事実、アルピニスタの勝ち時計は2分35秒71で、'21年トルカータータッソの2分37秒62、'20年ソットサスの2分39秒30より速かった。'12年のソレミアの勝ち時計だって、2分37秒68と今回より2秒近くかかっていたのだ。
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています