左のひざが左のひじを跳ね上げた。そんなはずないのに、そんなふうに見える。股関節の開きも腰の回転も肩の稼働も何もかも柔らかく、それでいて威圧感が充満した。
村田兆治。「東京」から「ロッテ」へと名を変えたオリオンズの誇る本物の投手だった。
1968年から'90年まで通算で604試合に登板、215勝177敗33セーブ、2363奪三振、防御率3.24の記録を残した。忘れがたいフォームと忘れてはならぬ実績は、日本のプロ野球史のページをいつまでも重くさせる。
先発完投をグラウンドのみならず人生のモットーに掲げ、そうなるように精進を重ね、日本シリーズ制覇で胴上げの栄誉に浴し、別のシーズンには21勝を挙げた。
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photograph by KYODO