栗山巧が打席に立つと、何とかしてくれるはずだという空気が漂う。たとえば同点で迎えた9回裏、ツーアウト一、二塁という一打サヨナラの場面で栗山が登場した。フルカウントから、インコースへのきわどいボールを平然と見逃して、フォアボールを選ぶ。土壇場できっちりとつなぐ仕事をしてみせた栗山だったが、じつはこのとき、意外な想いを抱いていたのだという。
「あの場面、つなぐことはできましたが、決めることはできなかった。ボール気味の球であっても、打って決めたかったというのが本音です」
プロ2年目、栗山は二軍の試合で詰まりながらもレフト前に落とすヒットを打って、押し込む感覚を掴んだ。そして栗山はその後、ライオンズで18年をかけて2000本のヒットを積み重ねてきた。それは、押し込んで逆方向へ打つ技術の賜物だ。
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photograph by KYODO