高卒ルーキーらしからぬ落ち着きに、巧みなグラブさばきと配球の妙。今季、佐々木朗希の全投球を受け止める18歳はプロ入りわずか7試合目での偉業をどのように捉えているのか。怪腕を導くリードの心得を、記憶に残る一球とともに語る。
4月3日、マリーンズの松川虎生は、初めて千葉のお立ち台に上がった。
「1年目の松川虎生です。一戦一戦、本当に大事になってくると思うので、チームのために一瞬一瞬をすごく大切にして、頑張っていきたいと思います」
その直後のことだ。松川にお立ち台での気分を改めて訊ねたら、初々しい(はずの)18歳はじつによどみなくこう答えた。
「何を喋ろうかなと考えていたら、すごく緊張しました。今も、すごく嬉しい気持ちでいっぱいです」
いやいや、とても緊張してるようには見えなかったけど、本当に緊張していたんですか、と混ぜ返してみた。すると初々しい(はずの)彼はこう続ける。
「ハイ、緊張してました……たぶん(笑)」
だから思わずこう訊いてしまった。
「えっと、プロ何年目でしたっけ」
すると高卒ルーキーの(はずの)松川は苦笑いしながら「1年目っス、まだ2カ月くらいっス」と律儀に答えてくれた。
「ナイターだったりデーゲームだったり、毎日、試合があるところが高校生のときとは違います。日々、ユニフォームを着て野球に打ち込めていると野球が仕事なんだなって実感が湧きますし、それが僕にとって糧になってるかなと感じてます」
昨年の今頃は、市立和歌山高校の主将として夏の甲子園出場を目指していた。それがわずか1年後、マリーンズのキャッチャーとして一軍の試合に出て、完全試合を含めた今シーズン、佐々木朗希が投げる試合では必ずマスクをかぶっている。交流戦を迎えるまでの8試合、佐々木は55イニングス、198人に対して756球を投げた。そのすべてを松川が受けてきたのだ。
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photograph by Asami Enomoto