その姿を追うカメラマン、番勝負の舞台の女将、地元東海棋界の重鎮、将棋中継の革命者、将棋沼にハマった芸人、女流棋士にして観戦記者。6人が間近で見て、感じて、魅了されたヒーローの横顔を明かしてくれた。
私は本業である女流棋士とともに、一昨年から読売新聞の記者の方にお誘いを受けて観戦記者を始めました。
その“デビュー戦”は、関西でお世話になっている畠山(鎮)先生の対局でした。「畠山先生に恩返しできるな」と思って引き受けたのですが、その相手が藤井聡太先生(2020年1月24日、竜王戦3組ランキング戦)だったんです。
観戦記者は基本的にファンの皆さんと同じく対局中継を画面で観るのですが、終局直後、タイトル戦なら検分などでも本人に質問することになります。なので、藤井先生にも話を聞かなければいけませんでした。
「何を聞けばいいんだろう」「何百回も何千回も聞かれたような質問をしてしまうのでは」「そもそも自分が考えた質問、失礼じゃないだろうか」など、とにかく緊張していましたが、藤井先生は本当に優しく、対局後にわざわざ時間を取って丁寧に質問に答えてくださいました。
これまで藤井先生の対局の観戦記は3度担当しましたが、昨年10月の竜王戦第3局では初めてタイトル戦を任されました。
質問は事前にメールなどで対局者にお聞きしておくのですが、藤井先生は棋聖の就位式や過密日程の対局などでなかなか取材できるタイミングがなく、藤井先生の言葉が「ゼロ」の状態でした。記事を書かなければいけないのに、どうすればいいんだろう……と悩んでいると、旅館の湯殿からお風呂上がりの藤井先生が出てこられた。タイトル戦では対局者の方と関わる時間が少ないこともあって、「今しかない」と勇気を出して1つの質問をしました。
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photograph by Yomiuri Shimbun