#1037
巻頭特集

記事を
ブックマークする

[この名牝がスゴかった!]渡辺明「ファインモーションと高校生の思い込み」

2021/10/08

 私はいわゆる「ダビスタ世代」。中学生のときにクラスで「ダビスタ」が流行って、それがきっかけで1998年くらいから競馬を見始めました。当時はまだ奨励会員で、プロ入りする前でしたが、将棋界には競馬好きがたくさんいるので、競馬に触れる機会も多かったんです。

 '98年はスペシャルウィークがダービーを勝った年で、同世代のエルコンドルパサーやグラスワンダーなど歴史に残る牡馬のスターホースがどんどん出てきて、大レースでは牡馬が勝つのが当たり前でした。'97年にエアグルーヴが天皇賞・秋を勝った時はまだ競馬を観ていなかったこともあって、「メスはオスより弱いんでしょ」というのが私の中で競馬の常識になっていました。

 それから数年経った頃に出てきたのがファインモーションです。はじめて「牡馬に勝てるんじゃないか?」と思わせられた牝馬でした。

 この馬は夏の上がり馬で、2001年、2歳の12月にデビューして、しばらく休んで次走が翌年8月の500万下。私がこの馬に注目したのは、次の阿寒湖特別からでした。単勝1.3倍で2番人気が11.2倍ですから、たぶんあの頃の競馬ファンのみなさんも私と同じような認識だったんじゃないでしょうか。ここを5馬身差で圧勝して前哨戦のローズSも勝って、秋華賞で無敗の5連勝。オッズは1.2倍と1.1倍ですか。1頭だけ馬なりでギューンと伸びる別次元の走りでしたから、この人気も当然だと思います。

 私は当時、高校生でした。棋士になって3年目ですね。競馬好きの同級生と「ファインモーション見た?」みたいな感じで話した記憶があります。もちろんまだ馬券は買えませんでしたが、毎週、競馬友達10人くらいと予想みたいなことをやっていたんです。出馬表の書いてあるノートを回して、順に◎とか〇を書いて回していくという。ファインモーションの時は、もう相手探しです。今も同じようなことやってますけど(笑)。

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Hideharu Suga

0

0

0

前記事 次記事