#1029
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「面白くなければプロじゃない」佐藤輝明、新時代タイガーの咆哮<大学恩師の証言「あいつだけは最後までわからんかった」>

2023/10/29
躍動する猛虎が巻き起こす新風の、まさにど真ん中。ありとあらゆる新人記録を塗り替えんばかりの勢いで、規格外のブレイクを遂げる令和の怪物ルーキーは、その言葉を紐解くと、思考もまた、規格外であった。(初出:Number1029号佐藤輝明「面白くなければプロじゃない」~新時代の咆哮~)

 大阪湾と六甲山系の狭間に建つ阪神甲子園球場には2つの風が吹く。海から寄せるアゲンストの浜風と、山からフォローに吹き下ろす六甲おろしである。ただ、山颪は冬の季節風であるため、野球シーズンには吹かない。それゆえ虎党は、せめてもの願いを込めて、あの球団歌を唄ってきた。

 奇しくも、ウイルスによってその祈りすら口ずさめなくなった2021年シーズン、強烈な追い風を吹かせるバッターが甲子園に現れた。リーグ本塁打王を争い、オールスターファン投票では12球団トップ、世の耳目を独占する佐藤輝明である。

 じつは、まだ本塁打を放つ前から、彼の一挙一動は周囲を唖然とさせてきた。2月の沖縄キャンプで、噂のルーキーを初めて目にしたスタッフ一同の心境を、ヘッドコーチの井上一樹はこう表現した。

「心臓に毛が生えているというか……。普通なら新人選手は、キャッチボールでは先輩より早くグラウンドに出てくる。ミーティングでは一番に会場に入っている。自分たちはそれが当たり前だと思っていたけど、そういうところは一切なかった(笑)。まずそこで、すごい奴だなと思った」

 そよぐ春風のなかを佐藤はひとりゆく。トレーニングで持久走をやらせれば、どん尻を走った。ノックで疲れれば、へたり込んだ。根性論や同調圧力とは無縁の若者に、一同は唖然としたのだ。

佐藤「いやあ、自分としてはそれなりにというか、いつも良い緊張感は持っているつもりなんですけど。ただ、皆さん優しくて良い方々ばかりなので、それに助けられている部分はあると思います。怖いなと思う先輩ですか? あんまりいないですね。注意していただくことはありますけど、めちゃくちゃ怒鳴られたことはありませんから」

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photograph by Hideki Sugiyama

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