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<現役最終戦に秘めた思い(17)>中西学「リングから降りても死ぬまでプロレスラー」

2021/06/15
野人最後のアルゼンチンバックブリーカーに呼応して、仲間たちがそれぞれ得意の極め技を披露
「一生、寝たきりになるかもしれなかった」大怪我を克服しても、思うように動けない“野人”のもどかしさは消えなかった――。

2020.2.22
中西学 引退記念大会
第6試合 60分1本勝負
成績
永田裕志、小島聡、天山広吉、中西学
VS.
後藤洋央紀、飯伏幸太、棚橋弘至、オカダ・カズチカ
18分3秒 ハイフライフロー→片エビ固め

   ◇

 後楽園ホールは人で埋まっていた。マスク姿が大半だったが、空席はなかった。忍び寄るウィルスへの恐怖よりも、今宵の熱狂を選んだ人たちで埋まっていた。

 中西学は会場を見渡した。ライトに照らされて浮かび上がるリング、人いきれと汗の匂い、30年もの歳月をこの空間で生きてきた。それも最後になる。

 場内には「中西学 引退試合」という大看板が掲げられていた。

《コロナが出始めでしたが、チケットは一枚も残らなかった。この世界に入ってからずっとそうですが、お客さんは何を観たいのか……最後までそれを考えてました》

 傍らには、3人の男たちが並んでいた。猛牛の異名を取る天山広吉、タフファイトで知られる小島聡、そして長年タッグを組んできた盟友・永田裕志である。

 ともに、新日本プロレス創始者のアントニオ猪木から直接に指導を受けていない三代目の世代ということで、「第三世代」と呼ばれてきた。1990年代半ばから2000年代のリングを彩ってきた同志たちだ。

 彼らも50歳にさしかかっていたが、時代とともに立ち位置を変えながらリングに立ち続けていた。プロレス界にはそれだけの懐があり、IWGPヘビー級のベルトを巻いたことのある中西にも、彼らと同じくライトを浴び続ける資格があった。それでもリングを去ると決めたのはプロレスラーとして、自分の信義に従うためだった。

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photograph by Essei Hara

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