パソコンの前に座った坂本勇人は、ぐっと顔を近づけてきた。オープン戦の合間をぬってのオンライン取材。モニター画面だからだろうか、大写しになった顔は、以前よりやや丸みを帯びて見えた。
15年目の開幕を迎えた。昨年、31歳10カ月という史上2番目の若さで2000本安打を達成。元々数字的な目標を持たない男だが、一つの区切りにはなったはずだ。
――心境の変化は?
「ここ何年かずっと変わらないですね。今年はどんな成績になるんだろうという不安と期待がある。個人的な目標は、今でも本当にないんですよ。具体的な数字はないんですけど……」
彼は淡々とそう言った。だが、問わず語りに続けた話は意外なものだった。
「でも、チームの選手はもちろん、他球団の選手にも、常に認められたい。あいつ、やっぱりいい選手だなって、周りから認められるような成績を残したい……。それが一番のモチベーションですね。自主トレからずっと、トレーニングで追い込んでいるときも、それを思うと頑張れますね」
――仲間に認められたいということ?
「仲間というか、野球人の人たちに」
僕はイチローさんのようにはなれない
野球人に認められたい――。それは一見、彼には似つかわしくないセリフに思えた。
坂本に話を聞くのは2016年の開幕直前以来、5年ぶりのことだった。
当時の坂本は打撃面で殻を破れないでいた。それまでの3年間、打率2割7分前後、本塁打10本台と、卓越した打撃センスからすれば物足りない成績が続いていた。このまま「停滞」してしまう危機感はないのか。そう尋ねると、「危機感なんてない。楽しくやらせてもらってる」と強がりながらも、「大きく打撃フォームは変えにくい」「どうすれば脱皮できるかは、正直、わからない」などと葛藤を口にした。そんな坂本に「これからプロ野球選手としてどうありたいと思っているのか」と根源的な問いを投げかけてみた。すると彼は、こんなことを言ったものだ。
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