監督・原辰徳のデビュー戦は2002年の3月30日、東京ドームでの阪神戦だった。開幕戦で阪神に1対3で敗れ、そこから3連敗。しかし6月に首位に躍り出ると、2位以下を突き放してセ・リーグ優勝を果たし、西武を下して日本一の座についた。ところが2年目のシーズンは主砲・松井秀喜のメジャー移籍に加え、主力野手に故障が続出。投手陣も前年の優勝を支えたベテラン陣の不調が目立ち、早々に優勝戦線から脱落して3位へと転落してしまった。
やっぱり1年目、2年目を振り返ると、監督として幼かったなと思いますね。当時の私には監督たるや、というものがあって、それは亡くなった藤田さん(元司元巨人監督)であったり、父(原貢元東海大学系列校野球部総監督)の晩年を見て、自分で描いていたものでした。しかし実際は1年生監督。背伸びしていた訳ですよ。全てを自分でやりたいと思って、実際にやろうとしてしまっていました。
監督というのはアンテナを何本も持って、そのアンテナで色々な意見や情報を集めて、それを発信していく。ただ、集まった情報や意見でも、ある時には聞かなかった振りをしなければいけないこともあるし、答えはノーでも『理解しているよ』と伝えなければならないときもある。そういうことができるようになるのは年輪、経験なんです。
私はいまも日々、積み重ね、毎日、毎日が成長だと思っています。そのことは父がよく言っていました。「一足飛びなんて誰もできやしないんだ。みんなそのときはベストだと思ってやっている。お前も1年目、2年目の監督を、後から振り返ると滑稽だと思うこともあるだろう。しかし、その時にその場でこれは正しいという信念がないと積み重なっていかないよ」と。だから1年目、2年目の自分を振り返った時に、確かに幼かったと思います。ただ、あの経験があったから、次の自分があった。特に1度目の監督を退いた後の時間が、自分にとってはその後の大きな糧になったなという思いがあります。
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