選手時代を含めると、16度目の日本一に輝いた。自称「野球オタク」。常に野球のことばかり考え続け、選手たちにも同じ姿勢と意識を求めた指揮官のこの4年間の変化と、2020年の進化とは――。
最初から一つも負けるつもりはなかった。選手時代に日本シリーズには14度出場し、11度の日本一を経験。監督としても、今年で5度目の檜舞台に立った工藤公康監督は、4戦先勝へのあらゆる戦い方を熟知している。
シリーズ開幕2日前だった。チームは夕方に第1戦が行われる大阪への移動を控えていた。午前中から本拠地のPayPayドームで最後の調整を行い、その練習後に工藤監督を代表取材の5名の記者が取り囲んだ。そのうちの1人から「いよいよ大阪ですね」と息巻いた質問が飛ぶ。だが、誘いには乗らない。「まだ明日からです。選手たちも、今日はまだしっかり体の手入れをして良い調整をしてもらえればいい」と笑顔と共にたしなめた。
しかし、心に熱を帯びていないわけではなかった。シリーズの展望に話が及ぶと、徐々に勝負師の顔になっていく。
「VTRはずっと見ています。選手ならば対戦相手となる投手、もしくは打者を見ればいいですけど、僕の場合はそのチームの流れだったり、どんな試合運びをしたりするのかを確認しないといけないので、どうしても時間がかかってしまう。大阪に行ってからも、しっかり時間をかけて見ます」
その言葉から、球団のスタッフが教えてくれた話をふと思い出した。
「野球が生活の一部ではなくて、野球が生活そのもの。野球界にそこそこ長くいて、いろいろな人を見てきましたが、あんなに四六時中野球のことを考えているのは工藤監督くらいですよ」
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photograph by Nanae Suzuki