同じリーグの同地区のエース同士――。分析好きな2人は意外な関係を築いてきた。ライバルにして友人が語る“憧れのYu”。
弾んだ声が心地よく耳に響いた。
「元気ですか? 久しぶり!」
スマホから熱を帯びたトークの幕開けを告げたのは、トレバー・バウアーだ。オフのトレーニング開始を間近に控えた10月下旬の日曜日、バウアーはロサンゼルスの中心街から北西に車で約40分のサンタクラリタにいた。
今シーズン5勝4敗ながら、防御率はリーグ1位の1.73、WHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計)は0.79という抜群の成績を残し、11月11日(日本時間12日)に発表される「サイ・ヤング賞」でナ・リーグの有力候補に挙げられるバウアーに連絡をしたのは他でもない。栄えある賞の好敵手で今季8勝を挙げ、日本人初の最多勝を手にしたダルビッシュ有の投球を分析してもらうためだった。
「Yuをデビューからずっとビデオでチェックしているから、データと動作解析の目線でいきます……か?」
やんわりとした語尾にはバウアーのほのかな期待がにじんでいる。ツイッターやインスタグラム、そして動画を含めたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をフル活用した微に入り細を穿つバウアーのダルビッシュ分析は、すでにメジャーファンの間では有名だ。その彼に動作解析の術語が頻出する“衒学的”な饒舌を求めるのであれば何ら新鮮味はない。今回の質問に対する答えの核心には、より実戦的な目線を据えてもらった。
今季のダルビッシュは、これまでとどう違ったのか。一瞬、間をおいたバウアーは一気に解きほぐしはじめた。
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