シーズンが終わっても、ダルビッシュ有は長髪のままだった。
3月中旬、新型コロナウイルスの影響でキャンプが中断され、7月下旬に開幕した公式戦60試合の変則シーズン。日本人初となる最多勝のタイトルを獲得し、サイ・ヤング賞の有力候補に挙げられるほど、強烈なインパクトを残したシーズンだった。
だが、まだ投げ足りない。頭の中から投球のことが離れることはなく、思い付くたびにボールを握る。周囲が何と言おうと、現在もコロナ感染のリスクは残っており、今のところ、散髪するつもりもない。そこに神経を使う必要性すら感じていない。そんな正直な生き方を、ダルビッシュは貫いてきた。
34歳になっても、なお前に進み続けるダルビッシュは、これまで何を考え、追求し、いかにして自らを磨いてきたのだろうか。
そして、どこへ向かうのか。
自宅のあるテキサス州ダラスに戻ったダルビッシュが、パソコンの画面越しに、胸の内を素直に明かした。
――例年三十数試合投げるところが、今季はポストシーズンを含めて登板は13試合。終了後、体力的にどんな感じですか。
「普段はもうちょっと体が疲れている感じもしますし、シーズン終盤って痛いところが結構出てきて、それが慢性的になってくるので、シーズン終わったら結構ボロボロな部分があるけど、今年はあんまりそんな感じはなかったです」
――余力を残して終わった感じですか。
「メンタル的にあまり消耗することはないですけど。今年特に感じるのは体で、まだ元気な状態で終わっているから、シーズンが終わって1週間、10日ぐらい完全に休みを取ろうとしても、やっぱり体と頭は野球をしようとする。だから、ずっと野球のことばかり考えてしまって、しっかりオフは取れてなかったかなという感じはします」
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