#1008
巻頭特集

記事を
ブックマークする

<ライバルを追い続けて> 今宮健太「雄星に負けて、僕は変わった」

2020/08/10
花巻東に完敗し、花巻東に勝つことを目指した明豊の主砲、今宮健太。やり切った末の敗戦には笑顔を見せた。
二刀流で注目を集めた“怪童”の前に立ちはだかったのは、のちにメジャーリーガーとなる花巻東の背番号1だった。小柄な体躯から剛速球を投じ、聖地を沸かせた名遊撃手が追い続けたライバルとの2度の邂逅を振り返った。

2009年8月21日 準々決勝
明豊 6-7 花巻東
序盤に4点を奪われた明豊は徐々に追い上げ8回に逆転。2点差で9回を迎えたが花巻東の連打で同点とされ、10回に勝ち越しを許した。

 ゴールデングラブ賞5度を誇る名遊撃手で、今年7月3日にはプロ野球史上初めて20代でプロ通算300犠打を達成した今宮健太。しかし、明豊高校(大分)時代は高校通算62本塁打を放ち、マウンドに上がれば剛速球を投げ込む二刀流選手として名を轟かせた。

 当時の九州高校球界は粒ぞろいだったが、チームとして敗れることはあっても個の対決で脅威を感じることはなかった。

「こいつは違うな」と今宮を唯一警戒させたのが清峰高校(長崎)の今村猛(現・広島)。同じ長崎には大瀬良大地(長崎日大高校、現・広島)もいたが、まだ恐れる存在ではなかった。1学年上には沖縄尚学高校でセンバツ優勝投手になった東浜巨(現・ソフトバンク)もいたが、九州大会で対戦して投げ勝ったことがある。

 入学してすぐにレギュラーとなった今宮は2年生時に続き、3年生でも春のセンバツ甲子園出場を果たした。

「明豊には良いメンバーが集まっていた。頂点を目指す。それだけでした」

菊池雄星は「バケモノでした」。

 初戦を快勝し、迎えた2回戦の相手は岩手の花巻東高校。ここで「みちのくの怪腕」と初めて対峙した。1年生夏から甲子園の土を踏み、この大会でも初戦で152kmをマークしていた菊池雄星(現・マリナーズ)だ。今宮は初対決でライト前ヒットを放つ。その手にはいい感触が残っていた。「やれるじゃないか」。そう思ったのも束の間だった。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Hideki Sugiyama

0

0

0

前記事 次記事