2006年7月、IWGP王座初獲得を果たした相手のバーナードから、ある時、棚橋はひとつの助言を授けられる。プロレスとファンとの特別な関係を示すその教えは、無観客時代を迎えたいま、“逸材”の心に何をもたらしたのか。(Number1006号掲載)
今回のインタビューのテーマは“ベストバウト”。数ある試合のなかで、本誌が選出した棚橋弘至のベストバウトは2試合。2006年7月にIWGPヘビー級王座を初めて獲得した札幌の試合。そして、それから5年後の'11年7月に場所も同じ札幌でおこなわれた同王座防衛戦。いずれも対戦相手はジャイアント・バーナードだ。この2試合をテーマとしたのは、棚橋とバーナードの二人の間に、知る人ぞ知る特別な関係が結ばれていたことにある――。
「ぼくは、ベストバウトというのは、シチュエーションがつくるものだと思っています。この二人はどうして闘うのか。どうして勝たなければいけないのか。闘う理由があって、そういう熱があって、あらゆる必須条件が揃ってこそのベストバウト。偶発的には生まれないものだと思います」
――棚橋選手は、バーナードから「プロレスはプレイ・バイ・イヤ(Play by Ear)だぞ」とのアドバイスを受けたという有名なエピソードがありますが、そのときのことをくわしく教えてください。
「どんなタイミングだったかは忘れてしまいましたが、バーナードが『いいか、タナハシ、プロレスは耳でするんだぞ』と話してくれたことがあったんです。歓声であったり、会場の音をよく聞いて、ファンがいまいちばん(自分に)どう動いてほしいのかを判断して、試合を組み立てていくんだ、という意味で受けとりました。耳で試合をしろ、というアドバイスでした」
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photograph by Tsutomu Umezawa