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<プレイボールを待ちながら> 中田翔「恥ずかしいけどダンスで発信」

2020/05/09
 ファイターズの中田翔はプレーできないジレンマを抱え、その中でプロ野球選手としてできることを模索した。無力感に苛まれながら見つけたのが、自身のイメージやシャイな殻を破ってカメラの前に立つことだった。(Number1002号掲載)

 今シーズン、ぼくたちは野球ができるのだろうか。正直に言えば、そんな不安すら抱いています。

 個人的に言えば体は最高の状態です。毎年2月に行うキャンプを今年はもう2回りか3回りくらいやっているようなものなので体力的なコンディションというのは万全です。ただ、ぼくらはボディ・ビルダーではありません。野球ができなくては意味がないんです。一体いつになったら野球ができるのか……。そういうもどかしさを日々、感じています。

 その一方で、もし急に開幕すると言われても野手ならではのジレンマもあります。

 バッターというのは「生きた球」を打たないと実戦感覚を維持していくことができないんです。いくら打撃投手の人たちに全力で投げてもらって練習していたとしても、それは公式戦で投げてくる相手ピッチャーのボールとはまったく違います。

 打席の中の感覚というのは実戦の中でしか調整することができないんです。普段ならば、それを1カ月間のオープン戦で養ってから開幕となるわけですが、今はオープン戦もできず練習試合もできません。このまま自主練習という状態が続けば続くほどバッターの試合勘というのはどんどん失われていくんです。

 だから急に開幕できる状況になったとしてもいきなりこれまでのようなパフォーマンスを見せられる打者はだれもいないと思います。お客さんに満足してもらう状態にするにはそれなりの時間が必要になってしまうんです。

鍛えているから大丈夫だと思っていた。

 それでも、今は野球どうこうと言っているときではないということもわかっています。世界中で多くの方が亡くなり、日本も危機的な状況になって、ぼくたちプロ野球選手だっていつ感染してもおかしくありません。自分と家族を守らなくてはいけません。

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photograph by Nanae Suzuki

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