子どもの頃、夢のひとつは球場を造ることだった。ノートに「理想の球場」を描いては(もちろん稚拙な絵だ)、選手が躍動する様を妄想……。地元ではナゴヤドームが建設中、そんな時代に描いたのは屋外の狭くて賑やかな球場だった。
本書を開いてまず目に飛び込むのが、球場全体の平面図。そして、物語は常に球場を中心に動いていく。
低迷にあえぐ架空の球団「スターズ」。その新球場「スターズ・パーク」が本書の主役だ。副都心・新宿に再開発の一環として建設された同球場は、ネット裏にオフィスビル、外野スタンドの後方にはホテルとショッピングビルが建ち、3棟に囲まれる形でグラウンドがすっぽり入る構造。大リーグ好きのオーナー・沖の意向、いわば「夢」や「理想」がふんだんに盛り込まれた球場を舞台に、監督の樋口ら現場はペナントレースという「現実」を戦っていく。
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photograph by Sports Graphic Number