「イチロー、一線を退く意向を球団に伝える」
その速報はMLB開幕第2戦の最中に流れた。
昨年5月、マリナーズ会長付特別補佐に就任後、実戦から遠ざかること10カ月。孤高のヒットメーカーはいかなる心境で決断を下しラストゲームに臨んだのか。
その速報はMLB開幕第2戦の最中に流れた。
昨年5月、マリナーズ会長付特別補佐に就任後、実戦から遠ざかること10カ月。孤高のヒットメーカーはいかなる心境で決断を下しラストゲームに臨んだのか。
いつもの場所に「51 ICHIRO」のネームプレートはなかった。3月23日のマリナーズクラブハウスは東京から戻り、練習を再開した選手たちの活気であふれていた。だがそこだけは無機質なハンガーが数本ぶら下がったままだ。無造作に重ねられた段ボールの空箱が、主のいないロッカーを寂しく演出していた。
そういえば、用具の置かれていない彼のロッカーをもう何年も見ていない。オフの間もイチローだけがここで自主トレしていたから、そこには彼の息づかいを感じさせる何かが必ずあった。マイアミでもそうだったし、こっそり取材した晩秋のヤンキースタジアムでもそうだった。この虚無感、空白感がこれから小さくなることはないだろう。むしろ今後は少しずつ、無限に広がっていくのではないか。突然現れた巨大な風穴を眺めるような気持ちで、しばらくロッカー前に立ちつくした。
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photograph by Naoya Sanuki