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<6年間の伴走を終えて> 前専属トレーナーが明かす、 錦織の進化する心と肉体。

2019/01/29
 未完成で故障がちだった肉体を一からつくり変え、躍進を支えてきた専属トレーナー、中尾公一氏。
 6年間に及んだツアー帯同生活で彼が見た錦織とは。

「あっ、やったな、と。これは長くなると、MRIを撮る前でしたが、なんとなく分かりました。それはもう、ショックですよ。トレーナーはケガをさせないために入っているので、自分としては失敗ですから」

 淡々とした口調に口惜しさを封じ込め、中尾公一がその瞬間を振り返る。'17年8月、同行していた錦織圭は右手首の尺側手根伸筋腱脱臼でツアーを離脱、復帰まで約5カ月を要した。治療と直後のリハビリはベルギーの医師と理学療法士に任せたが、中尾は、フィジカル強化を受け持つロビー・オオハシとともに復帰をサポートした。

 昨年1月の復帰後もしばらく痛みが残ったが、中尾は「大丈夫、痛みはもう増えない」と選手の不安を打ち消した。もっとも、言葉で励ましたのは復帰当初だけ。「6年もやっていると、声を掛けなくてもわかります。彼はもともとあまり喋らないし、こっちもだんだん喋らなくなる」。中尾は黙って錦織の横を伴走した。5月のマドリードでは手首を気にする錦織にテーピングを再開した。医師には止められていたが、押し切った。「痛みが半分ぐらいに」減り、長いブランクでショットの感覚を失っていた錦織に本来のプレーが戻った。

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photograph by Getty Images

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