胴上げが懸かった本拠地での試合ともなれば、味わったことのない独特の雰囲気が漂っていたことだろう。先発を託されたライオンズの高卒2年目、20歳の今井達也は、コントロールに苦しみながらもキレのいいストレートとチェンジアップ、スライダーを駆使して、6回2失点と、要所を締める粘りのピッチングを見せた。結果、チームに勝ちをもたらすことはできず、胴上げはお預けとなってしまったのだが、試合後の今井は「最低限のことはできた」と振り返っていた。
目深にかぶった帽子、細身の体躯、しなやかなフォームから繰り出す140km台後半のストレート……思い起こしたのは、若き日の桑田真澄だ。彼らが夏の甲子園の優勝投手であることも、この日の試合中、親指のツメのつけ根から出血し、血染めのボールを投げていた(桑田は高2の夏、決勝の取手二戦)ことも、桑田が今井に重なった理由だった。
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photograph by KYODO