0か100か――彼が投げていたボールは、そのくらい良し悪しがハッキリしていたのだという。去年の9月7日、遅まきながら訪れたシーズン初登板のカープ戦。2点ビハインドの6回、2番手としてマウンドに上がったタイガースの左腕、榎田大樹はストレートとカットボールが冴え、3イニングを投げて、カープ打線を無失点に抑えた。
「あの試合は結果的には抑えられたかもしれませんが、投げていて気持ちがよくなかったんです。いいボールとそうでないボールがあまりに極端で……シーズン終わってからもしばらく落ち込んでましたからね」
去年、プロ7年目を迎えたドラフト1位は、ルーキーイヤーの2011年にはオールスターゲームにも出場し、62試合に投げて防御率2.27を記録している。そんな榎田が去年、ファームで先発、リリーフと、ともに結果を残しながら、一軍からはなかなかお呼びがかからなかった。左の先発は能見篤史、岩貞祐太に岩田稔も加わり、中継ぎも左は高橋聡文と岩崎優が好調を維持。状態がいいときにチャンスをもらえず、ずっと我慢を強いられていたのである。ところが榎田はこう言う。
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photograph by KYODO