舞台はキューバ、メキシコ湾流の海。小舟に乗って漁に出る老人は、不漁続きだった。40日目までは少年が同行したが、両親は少年を別の船に移らせた。85日目、いつもより沖合に出た老人は巨大なカジキを針にかけた。カジキはロープを握る老人の手を引き裂き、小舟を引き回す。丸2日間の戦いの末、銛で仕留めたカジキを小舟に繋ぎとめた。ところが、サメの群れに襲われて……。
一読しただけで心に残る、シンプルで力強い中編小説。大カジキと、そしてサメの群れと、三昼夜孤独の戦いを続けた老人は小舟の上で言う。「人間、負けるようにはできてねえ。ぶちのめされたって負けることはねえ」。小説の主題探しなどしたことはないが、老人が自分自身に語り掛けるこの言葉こそ、本書の主題なのが自然に伝わってくる。釣り文学の傑作、渋い冒険小説、不屈の人間を象徴的に描いた寓話ともいえそうだ。様々な感想が浮かぶのが、この単純な話の奥深さだ。
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