オートバイレースで世界を制したホンダ=本田宗一郎はF1レース挑戦を宣言した。「かつてF1で知られたいかなるメーカーも匹敵することのできない性能のエンジン」を作り世界の頂点を目指すというのだ。まだ、市販車も作っていない'62年のことだ。ホンダは手本になるF1カーを手に入れていたが、そのエンジンをうまく動かすことすらできなかった。本書は、そんなホンダの技術者たちが世界の頂点に立つまでの年代記、「F1事始」だ。主人公はエンジンを開発しレースの監督をも兼ねた歴代技術者たち。ホンダのバイクが外国で戦う短編映画に刺激された者。戦時中の戦闘機エンジン設計者から倒産したオート三輪会社をへて加わった者。面接で「レースをやらせてくれるなら」といった者。彼らは、“おやじ”本田宗一郎と同様にレースの夢に憑かれていた。
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photograph by Sports Graphic Number