14歳と152日での優勝をむやみに感嘆するまい。卓球はレスリングではない。このくらいの年齢の才能がひとつの大会の頂点に立つ可能性ならありえた。
ただし、この春からの中学3年生、伊藤美誠(みま)の落ち着いた態度はまさに驚きだった。試合中も試合後も感情がぐらつかない。
ドイツ・オープン決勝を制した瞬間、左腕をわずかに曲げて小さく笑った。それがすべて。映像に大写しの表情は、自分のこしらえた装飾細工を初めて教会のバザーで手にとってもらえた少女のようだった。
ワールドツアーにおけるシングルスの最年少優勝は、ゴールドの質感より薄い木綿の手触りを想起させた。あるいは花壇の隅の小さく白い花。「静かなる歓喜」とでも書けばよいのか。そのことが、むしろ怪物性を感じさせた。スポーツはそもそも「動」だから、しばしば「静」に迫力は宿る。
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