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<名投手秘話> 捕手が語る運命の一球。~黒田博樹(上宮)~

2014/08/12
勝利して世にその名を轟かせた者もいれば、敗北を糧に成長を遂げた者もいる。頂点を目指す戦いの日々には、後にプロで活躍する投手の人生を左右する運命の1日があった。灼熱のグラウンドの真ん中で、彼らとミット越しの対話を続けた捕手だけが知る真実とは。

黒田博樹(上宮)
1992年 公式戦登板なし
「聖地に手が届きかけた高校最後の春」

   ◇

「春季大会は投げてないしな。夏の予選も出番はなかったし。そうや、やっぱりあいつは3年のとき、公式戦で1球も投げてませんね」

 上宮高校で黒田博樹と同期の捕手、坂本竜平は古い記憶を確かめながらそう教えてくれた。坂本は近畿大学で野球をつづけたあと、現在はイベント会社の経営をしている。玄人好みのヤンキースのローテーション投手は高校3年のとき、公式戦に1試合も登板したことがなかった。これは異様なことではないか。

「力がなかったわけじゃないんです。入った時には、将来はこいつが背番号1やろって思ってました。でも、気が弱かった。ブルペンではいいのに、試合になると、四球を出しちゃいけないとセーブした投球になる。いわゆる、置きに行く投げ方になるんです」

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