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<育成のキーマンが描く世界戦略> 吉武博文 「ボランチが10人でも戦える」

2014/01/08
U-15代表候補の12月の沖縄合宿。2年後のU-17チリW杯を目指した戦いが始まっている。
相手がほとんどボールに触れることさえ叶わず、
圧倒的なポゼッションを誇った'13年のU-17代表。
常に主導権を握るサッカーを国際舞台で実践してみせた。
「日本にしかできないスタイルで勝負する」と語る
指揮官の言葉から、世界での戦い方のヒントを読み解く。

 南国・沖縄とはいえ、12月ともなると時折吹き込む風は冷たい。見学に訪れている人たちにもダウンジャケット姿が目立つ。

 とはいえ、ピッチ上は別世界だ。

「もっとテンポを上げて!」

 U-15日本代表候補キャンプには、熱気をもたらす大きな声が絶え間なく響く。

 声の主は、監督の吉武博文である。

 吉武は過去2度、U-17日本代表を率いてU-17ワールドカップに出場。'11年大会ベスト8、'13年大会ベスト16と、いずれもチームを決勝トーナメント進出に導いた。

圧倒的な支配率が象徴する、吉武流の対世界戦略。

吉武博文 Hirofumi Yoshitake
1960年、大分県生まれ。大分大卒業後に教師になり、'85年明野中を全国優勝に導く。大分トリニータユースのコーチ等を務め、'09年U-15日本代表監督に就任すると、'11年U-17メキシコW杯で18年ぶりにベスト8に進出。'13年の同UAEW杯でもグループリーグを突破し、ベスト16。現在'15年U-17W杯を目指す、U-15代表を率いる。

 だが、注目すべきは結果だけではない。吉武に率いられたチームは、ポゼッションで相手を圧倒。常に主導権を握って試合を進めるスタイルは「まるでバルサ」と各国関係者を驚嘆させた。'13年大会で記録したボール支配率は平均68%。翻弄され続けた相手チームには試合終盤、足がつる選手が続出した。

 吉武が目指すのは「全員攻撃全員守備」だ。別に日本は個の力で劣るから組織で補おうという発想ではない。「日本人はみんなで何かをやることが得意」だからだ。

「日本人にしかできないことで勝負する」

 これこそが吉武流の対世界戦略である。

「日本はいいときと悪いときの差が大きすぎる」

「どの国にもいいところと悪いところがあって、悪いところを改善するのも大切ですが、日本人には外国の人が真似のできない、いいところがある。そこをいかに多く出せるかが日本の突破口になるんじゃないか、という仮説で取り組んできました。具体的には、みんなで同じ目標に向かって何かに取り組んでいくなかで、予測力、集中力、協調性といったところをピッチのなかで表現できないかな、と。

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photograph by Wataru Kohayakawa

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