特大アーチで野球人気を牽引してきたのは間違いなくこの男だ。
新天地で復活した、魔神の如きブランコの豪打に刮目せよ!
酸素カプセルで横になっているときだった。
目を開けると西武の菊池雄星が帽子を取って頭を下げていた。前日、5月28日に受けた死球を詫びていたのだ。トニ・ブランコは顔の前で両手を振り「問題ないよ」と伝えた。とびきりのスマイルをそえて。
ブランコは当てられても怒らない。
「それが野球だから。僕の中では、ケンカをしないというのもプロフェッショナルであることの条件のうちのひとつなんだ。僕と同じドミニカ生まれのプホルス(エンゼルス)や、オルティース(レッドソックス)もそうだろう。偉大な選手ほど、怒ってもそれを態度に出したりしないものだ」
ブランコは打てば打つほど当てられる。来日1年目、39本塁打をマークした2009年は14死球も受けた。打撃好調の今年も死球はすでに7個を数える。これはリーグトップの数だ(7月3日現在)。
投手に恐怖感を植え付けられるよう、ブランコは日本に来てからバットを頭上に掲げ、アメリカ時代より大きく構えるようにした。
死球を浴びても怒らない温厚な性格と“頭の良さ”。
TONY HEMIPHERE BLANCO
1980年11月10日、ドミニカ共和国生まれ。'05年にナショナルズでメジャーデビューするが、定着はできず2Aでプレーしていたところを見いだされ'09年に中日入団。その年に本塁打と打点の二冠を獲得。'12年までに通算111本塁打を記録。今季DeNAに移籍して、開幕から本塁打を量産している。188cm、102kg。
しかし横浜の野手総合コーチ、二宮至はこう感心する。
「体つきとか雰囲気は怖いイメージがあるけど、性格は本当に温厚。それに当てられて怒るってことは、インコースを嫌がってるってことをアピールしているようなもんだからね。そうしたら相手はますますインコースを突いてくる。投げさせないためには怒らないことがいちばんいいんだよ。トニは頭がいいから、それをわかってるんだと思う」
スペイン語圏出身というと、チームメイトのラミレスのように陽気な選手を連想しがちだが、ブランコは二宮の言葉を借りれば「寡黙で内向的なタイプ」だ。笑うときも天に向かって「ハハハ」と哄笑するのではなく、ちょっと俯いて「へへへ」とはにかむ。
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