#751
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<認め合う同級生エース> 松坂大輔×和田毅 「武蔵と小次郎の如く」

2010/04/08
12年前の貴重なツーショット。この大会、松坂は決勝で無安打無得点試合を達成し、横浜が春夏連覇。和田の浜田高は準々決勝で敗退
あの夏、怪物の視界に、細面の左腕は入っていなかった。
それから12年。ともに昨季の雪辱を誓う同学年エースの秘話と、
対照的でありながら相通ずる幸福な関係を描く。

 彼らは、今も振りかぶる。そこに、二人の主張があるからだ。

「振りかぶるのはやめたくない。ノーワインドアップのピッチャーが増えてきたし、だからこそ、振りかぶることにこだわりたいんです。大輔もそうだと思いますよ」(和田)

「もちろん、こだわってます。ノーワインドアップにしたら余分な動きがなくなるからコントロールが良くなるとか、今でも言われます。でも、そこは野球を始めたときからのこだわりですから、絶対に変えない。振りかぶったほうがカッコいいし、ムダなことを省くなんて、不景気な時代の発想でしょ」(松坂)

甲子園で和田が松坂にせがんで撮った一枚の記念写真。

 ここに、一枚の写真がある。

 今から12年前の1998年8月6日。

 夏の甲子園の開会式直前に撮られた、二人の背番号1のツーショットだ。

 向かって左が、横浜高校の松坂大輔。

 右側にいるのが、浜田高校の和田毅。

 写真の持ち主は、和田だ。和田はこのとき、松坂に一緒に写真を撮ってほしいとせがんだ大勢の球児たちの中の、一人だった。

「最初、大輔と写真を撮りたくて、探したけど見つからなくて……そうしたら、目の前に大輔がぴょこぴょこっと出てきたんです」

 和田は、松坂に声をかけた。

「あ、すんません、写真、撮ってもらっていいっすか」

「ああ、いいっすよ」

 和田は一緒にいた自分のチームメイトにシャッターを押してもらった。

「僕、大輔に丁寧語でしたね。同級生とはいえ、知らない相手にタメ口はまずいと思ったし、でも君付けもおかしい。結局、名前を呼ばずにお願いしました。大輔に、甲子園で一緒に写真撮ったの、覚えてるって聞いたら、『ああ、覚えてるよ』みたいな感じでしたけど、あの言い方じゃ絶対、覚えてない(笑)」

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photograph by Naoya Sanuki/Hideki Sugiyama

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